河川や湖沼には当然のごとく魚が泳いでいますが、これらの魚類は自然繁殖したものだけではなく、放流された多くの魚がいます。
放流のほとんどは漁協により行われていますが、釣り人の中には自分の好きな水域へ好きな魚種を殖やしたいと考え、実際に行動する人もいます。
しかし、漁協以外の者、具体的には、個人や釣り団体などが公共水面である河川や湖沼へ放流するにあたっては、いくつか気を付けなければいけないことがあります。 |
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| 魚の放流に関する法的規制 |
魚の放流は実施者により2つに分けることができます。
漁協の放流
まず一般的なのは、漁業権を有する漁協が行う放流です。これは漁協が都道府県知事から漁業権の免許を受けるにあたって、魚類資源量を維持するための義務として行うものです。従って、漁協が採捕の対象とする魚(漁業権対象魚種)を(義務)放流することは、法律的に問題が発生するはずはりません。
漁協以外の者が行う放流
釣り人や市民団体などが行う(自主)放流にあたっては、各都道府県が設けている「漁業調整規則」で「オオクチバス、コクチバス、ブル−ギル」の移植が原則として禁止されているので、この規定に違反しないことが最低限のル−ルです。
また、放流をしようとする魚種が魚食性を有するものならば、放流予定水域に生息する魚種に対して食害などの影響が予想されるので、その水域に漁業権を有する漁協の承諾を得る必要があります。
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| 放流の形態 |
養殖魚または人工授精された卵を使用した放流には3つの方法があり、それぞれ次のような特徴があります。
成魚放流
形 態:養殖により成魚まで成育した魚を放流する。
魚 体:飼育されていた水槽のコンクリ−ト壁との擦れやストレスなどによる「ヒレ」の欠損が多く見られる。
警戒心:成魚まで飼育されたことにより、同種の自然繁殖魚に比べ警戒心が明らかに弱いが、釣られず生き残り続け、学習することにより徐々に警戒心も身に付く。
運 搬:活魚運搬車による移動によるため、自主放流では経費の負担が大きい。
稚魚放流
形 態:人工採卵・受精によりふ化させ、餌付け、稚魚まで成育した魚を放流する。
魚 体:成魚まで飼育された魚体に見られる「ヒレ」の欠損もほとんど無く、放流水域で順調に育てば野性の魚と呼べる。
警戒心:自然繁殖魚に比べ警戒心が弱いが、生き残り続け、成魚まで育てば野性の魚です。
運 搬:長距離では活魚運搬車が必要であるが、2時間位までなら酸素と水を封入したビニ−ル袋で運搬できるので、自主放流には適している。
発眼卵放流
形 態:人工採卵・受精によりふ化直前となった発眼卵をバイバ−トボックスなど器具を使用し、河川に埋設放流する。
魚 体:親魚の特徴的な形態が発出するものの、ふ化後の状況は自然繁殖と全く同一であり、魚体も当然に綺麗である。
警戒心:野性の魚です。
運 搬:発眼卵は空気中から酸素を取り入れることが出来るので、水分を含ませたスポンジなどに包み、氷などで冷却した状態では丸2昼夜ほどの運搬・保管が出来る。
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| 放流で注意が必要なこと |
法律的な規制を遵守することの他にも留意しなければいけないことがあります。
河川や湖沼は釣りをする人達だけのものではなく、水域周辺に生活する人達が子どもの頃から馴染んでいる「ふるさと」を象徴するものの一つであるはずです。この水辺に多少とも影響を与えるのですから良く考えてから実行しなければいけません。
生態系への配慮
釣りの対象とならない魚種やエビなど多くの生物も水中には生息し、食物連鎖を介してそれぞれの生息量のバランスが均衡した「生態系」を維持しています。従って、どんな魚種であっても、本来なら生態系に影響を与えるはずですから、その影響を少なくするよう配慮すべきです。
また、影響が発生しても釣り人や地域の人達が許容出来る範囲にとどめなければいけません。
純系への配慮
同一の魚種であっても、水域が異なると、外見や性質に多少とも異なる資質を有している例が多いと言われています。特に、降海、遡上など移動があまり無い、ニッコウイワナなどでは、水系ごと、厳密に言えば「沢」ごとに体の模様が異なるなどとも言われます。
この水域ごとに異なる形質を有した「系統」が存在する河川や湖沼へ他地域からの魚を放流し、繁殖により交雑し、「純系(統)」が無くなることに自主放流が関与しては行けないと考えます。
漁協が行う放流は漁業法に基づき実施するものですし、社会的に必要であると認知されているものなので、純系への影響が多少あったとしても許容されると思います。
しかし、釣り人や社会団体が行う自主放流では絶対に避けるべきです。
従って、自主放流は在来魚種の純系に影響を与えない水域、又は漁協の放流が既に行われた過去を有している水域に行うべきであり、魚種については交雑しないものを対象とし、放流する魚も出来るだけその地域で養殖されたものを使用することが必要ではないでしょうか。
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| ブラックバスの放流 |
違反者に対しては懲役や罰金を科す規定がある都道府県「漁業調整規則」ではオオクチバス、コクチバス、ブル−ギルの移植(放流)は原則として禁止しています。
現状では、一般の人が自分の好きな場所で釣りたいと、ブラックバスを繁殖させようと移植(放流)することは犯罪なのです。
それでは、バス釣り愛好者が合法的に自分が好きな湖沼にブラックバスが繁殖する状況を創り出すためには、何をしたらいいのでしょうか。
現時点において可能な唯一の方法は、「その釣り場を管轄する漁協がブラックバスを漁業対象とし、漁業権免許の際に漁業権対象魚種としてもらうこと」です。
漁業調整規則は「漁業権の対象となっているブラックバスを当該漁業権に係る漁場の区域に移植」する場合は移植禁止規定から除外しているし、漁業法で内水面の第5種共同漁業権は漁協しか免許しないと規定されているのですから、漁協にブラックバスを認知してもらうしかないのです。
バス釣り愛好者の皆さんは、バス釣りは300万人を超える釣り人が楽しむ健全なレジャ−だと主張しているのですから、「バスを釣りたい大勢の要望」を漁協に伝えることは可能でしょう。
そして、バス釣りの経済効果は極めて大きいと主張するのですから、漁協にブラックバスを認知してもらうため、バス釣りにより経済的に恩恵を受ける人達がお金を出し合い漁協へ働きかけることも可能なはずですよね。
ル−ルを破り既成事実を作るのではなく、ル−ルを遵守し、そのなかで主張を実現する努力をしなければバス釣りに明るい未来は生まれないと思います。
参考ですが、ブラックバスを漁業規則に違反して移植して警察に検挙されると、間違いなく罰則が科せられ犯罪者として前科がつきます。それだけではなく、移植魚とそれらから繁殖した魚の駆除費用を放流水域を管轄する漁協から請求されれば、負担しなければいけなくなります。群馬の奥利根湖のコクチバス駆除の経費を例に試算すれば、少なく見ても1年あたり1千万円近い駆除経費が必要なようですから、コクチバスの寿命を10年と仮定して駆除事業を行うとざっと1億円の費用負担が発生します。
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| 群馬県漁業調整規則(抜粋) |
群馬県漁業調整規則(抜粋)
(移植の禁止)
第33条 次の各号に掲げる魚種(卵を含む。)を移植してはならない。ただし、漁業権の対象となっている魚種を当該漁業権に係る漁場の区域に移植する場合及び移植について知事の許可を受けた場合は、この限りでない。
一 ブラックバス(オオクチバス、コクチバスその他のオオクチバス属の魚をいう。)
二 ブルーギル
三 らいぎょ
2 前項の規定による許可(以下「移植の許可」という。)を受けようとするものは、移植許可申請書(別 記様式第十号)を知事に提出しなければならない。
3 知事は、前項の申請書のほか必要と認める書類の提出を求めることがある。
4 知事は、移植の許可をしたときは、当該申請者に移植許可証(別記様式第十一号)を交付する。
5 知事は、移植の許可をするときは、制限又は条件を付けることがある。
6 移植の許可を受けた者は、当該許可に係る移植の終了後遅滞なく、その結果を知事に報告しなければな らない。
7 移植の許可を受けた者は、移植許可証に記載された事項に違反して移植してはならない。
8 移植の許可を受けた者が、移植許可証に記載された事項につき変更しようとする場合は、知事の許可を 受けなければならない。
9 第二項から第五項までの規定は、前項の場合について準用する。この場合において、第四項中「交付する。」とあるのは、「書き換えて交付する。」と読み替えるものとする。
10 移植の許可を受けた者は、当該許可に係る移植をするときは移植許可証を自ら携帯し、又は従事者に携帯させなければならない。
( 罰 則 )
第37条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 第6条、第13条、第24条第1項、第25条から第32条まで、第33条第1項若しくは第7項又は第34条第6項の規定に違反した者
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一部の人間が身勝手な放流することにより、その駆除の為に多くの関係者に迷惑を掛け、時間と多額の費用がかかります。
その費用は放流した本人が特定されない限り、我々の血税でまかなわれています。
決して、他人事で済ませてはならない事ですね。
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